村上春樹『騎士団長殺し 第1部顕れるイデア編(上・下)』(新潮文庫、2019)(再読)

3月に出た文庫版で
村上春樹『騎士団長殺し 第1部顕れるイデア編(上)(下)』
新潮文庫、2019)を再読する。
初めから読み直してみると、細部の描写、伏線に気づく。
一回目はずいぶん粗っぽく読んでいたんだなぁ、とも思う。



今度は図書館の蔵書でなく自前の本なので、
気になる箇所にシャープペンシルで線を引いていく。
佐藤優さん、松岡正剛さん、池上彰さんら僕が信頼する書き手は
やり方の細部は人それぞれだが「本を汚して読むこと」を一様に薦める。
実際試してみると、内容が頭に入りやすい。
たとえそれが小説でも、
ジャンルに囚われず試してみたいと思うのだ。



こんな箇所に線を引いた。


   そして辛抱強く待つためには、
   私は時間というものを信用しなくてはならない。
   時間が私の側についていてくれることを信じなくてはならない。
                     (第1部下巻 p.16)


   その直観がどのように鋭いものであれ、
   それを芸術という普遍的な形態に移し替えることができないのです。
   私にはそのような能力が欠けています。
                      (同p.21)


   しかし彼女の言葉による描写はずいぶん細密で刺激的だったし、
   想像の世界で行われる性行為はある部分、
   実際の肉体による行為以上に官能的だった。
   言葉はあるときにはきわめて直接的になり、
   あるときにはエロティックに示唆(しさ)的になった。
                        (同p.25)


精読・遅読はあまたある読書法の中でも
ひときわ面白く有意義な方法のひとつだと確信する。