図書館が貸してくれる順番に合わせて、
第2部、第1部と逆流して読み継いできた。
村上春樹『騎士団長殺し』(新潮社、2017)を読み終える。
初めに聞いたとき、ずいぶん不思議なタイトルの新作だと思った。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/02/24
- メディア: 単行本
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それから私ははっと思い出した。
モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』だ。
その冒頭にたしか「騎士団長殺し」のシーンがあったはずだ。
私は居間のレコード棚の前に行って、
そこにある『ドン・ジョバンニ』のボックスセットを取り出し、
解説書に目を通した。
そして冒頭のシーンで殺害されるのが
やはり「騎士団長」であることを確認した。
彼には名前はない。
ただ「騎士団長」と記されているだけだ。
オペラの台本はイタリア語で書かれており、
そこで最初に殺される老人は
「コメンダトーレ(Il Commendatore)」と記されていた。
それを誰かが「騎士団長」と日本語に訳し、
その訳語が定着したのだ。
現実の「コメンダトーレ」が
正確にどのような地位なのか役職なのか私にはわからない。
いくつかあるボックス・セットのどの解説書にも、
それについての説明は記されていなかった。
このオペラにおける彼は、
名前を持たないただの「騎士団長」であり、
その主要な役目は、冒頭にドン・ジョバンニの手にかかって
刺し殺されることだ。
そして最後に歩く不吉な彫像となってドン・ジョバンニの前に現れ、
彼を地獄に連れて行くことだ。
(pp.101-102)
(オレンジジュース。ポットコーヒー。温めたミルク。クロワッサン。バゲット。
バター。チーズ。ジャム数種。カンヌGホテルの、必要にして十分な朝食)
物語を一回読むだけでは
村上春樹の小説は味わい尽くせない。
二回三回と文章を読み、細部に耽溺することで
悦びが増し、余韻が深まる。
図書館が貸し出してくれる偶然のペースに乗っかって
自分の速度で再読、再々読したい作品だ。
既に次の予約を入れておいた。
「騎士団長」という言葉は、
今後はこの村上作品によって
人々に記憶されることになるのだろうね。
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」 K.527(全曲)
- アーティスト: テオドール・クルレンツィス
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2016/11/09
- メディア: CD
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