マルクス・ガブリエル/清水一浩訳『なぜ世界は存在しないのか』(再読)


村上春樹騎士団長殺し』と併読していて
シンクロニシティを何度も味わった。
マルクス・ガブリエル/清水一浩訳
『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018)を再読する。


なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)


冒頭から引用する。


   わたしたちはどこから来たのか。
   わたしたちはどこに存在しているのか。
   そもそもこの世界全体とは何なのか……。
   (略)


   今しがた掲げた問いのうち最初の二つは、
   いずれも小学校時代、
   学校から帰る途中だったわたしに
   ふと思い浮かんだものです。
   以後、いずれの問いも忘れたことがありません。
   (略)


   また別のときには、
   時間が過ぎ去るということを明瞭に意識した結果、
   「今」という同じ言葉が
   そのつどまったく別々の状態を指し示しているのを
   自覚するに至ったこともありました。


   おそらくこの瞬間に、
   世界は存在しないという着想が生まれたのでした。
   この着想を哲学的に掘り下げ、
   すべては幻想にすぎないという考えから区別するのに、
   わたしの場合じつに二〇年の歳月を必要としたわけです。
                      (pp.26-27)


小説、哲学とアプローチの方法は違っても、
村上、ガブリエル、二人の脳裏に浮かんでいる疑問は
変わらないようだ。
わたしたちはどこから来たのか。
わたしたちはどこに存在しているのか。


現実と非現実の境界があいまいにぼやけるとき、
その疑問が何度も思い浮かぶ。
『騎士団長殺し』を味読すればするほど、
ガブリエルの新実在論の理解が深まる気がどうもする。


騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編