タダのランチ、お金を払うのは誰?


スクラップブックから
朝日新聞2018年8月22日朝刊
携帯料金 菅氏「4割下げる余地」


   菅義偉官房長官は21日、札幌市内で講演し、
   携帯電話の料金について
   「4割程度下げる余地があるのではないかと思う」
   と述べ、料金の引き下げに取り組む考えを示した。
   23日に開かれる総務省の審議会で議論を始める。
   (略)


   大手携帯電話会社の利益率が高いとして、
   「携帯電話サービスは公共の電波を利用している。
   利益を利用者に還元していくものだろう」と述べた。


携帯料金を4割値下げする可能性を
官房長官が指摘。
一見して国民に支持される施策を
政府が進めているかのように見える。
でも、どうだろうか。
資本主義の原則に政府が介入し、
主導しているのではないか。



佐藤優ファシズムの正体』
集英社インターナショナル新書、2018)から引用する。


   さらに本書で繰り返し述べてきたように、
   ファシズム福祉国家論と親和的です。
   ファシズムの大きな特徴は、
   マルクス主義にもとづく社会主義革命を阻止すると同時に、
   自由主義的資本主義がもたらす、
   失業・貧困・格差などの問題を
   国家の介入によって是正しようとする運動だからです。


   だからこそファシズムは、
   失業や貧困にあえぐ国民から支持されやすい。
   しかし国家の介入領域が拡大すればするほど、
   国家によって市民の自由が
   大きく制限されていく可能性が高まります。
       (「第六章 日本でファシズムは可能か」p.184)


(2017年の朝日カルチャーセンター新宿教室講義をもとに大幅加筆)


政府と官僚が介入して
民間会社の利益までコントロールすれば
当面生活者は携帯料金引き下げの恩恵を受けるかもしれない。
一方国家の管理領域が拡大するリスクと
トレードオフであることを忘れてはなるまい。
タダのランチを国民にご馳走すると見せかけ、
請求書は民間会社に回す政府の手口をしっかり見届けよう。