村田沙耶香『コンビニ人間』(文藝春秋、2016/文庫2018)


日本型資本主義の行き着いたカタチのひとつが
コンビニであるように思う。
商品・人材管理によって効率を突き詰め、
利潤を追求する装置としてよくできている。
村田沙耶香コンビニ人間』(文藝春秋、単行本2016/文庫2018)を読む。
第155回芥川賞受賞作。文庫解説・中村文則(作家)。


コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)


(以下、ネタバレあり)
書き出しはこうだ。


   コンビニエンスストアは、音で満ちている。
   客が入ってくるチャイムの音に、
   店内を流れる有線放送で新商品を宣伝するアイドルの声。
   店員の掛け声に、バーコードをスキャンする音。
   かごに物を入れる音、パンの袋が握られる音に、
   店内を歩き回るヒールの音。
   全てが混ざり合い、「コンビニの音」になって、
   私の鼓膜(こまく)にずっと触れている。



家族、元級友たちになじめず、
コンビニの職場でだけは100%自分を発揮できる古倉恵子。
スタッフとして入ってきたコンビニでも
適応できなかったダメ男、白羽(しらは)。


金が尽き行き先を失った白羽を
古倉が自分のアパートに連れ帰るあたりから
物語が意外な展開を見せ始める。
同居していても性的関係に発展しない描写が
現代的で、リアルだ。
この小説を象徴している。


もはやコンビニなしに僕たちの生活は成り立たない。
清潔で整頓され、常に売れ筋商品だけが生き残れる空間。
村田の視点は、「いま」を掬い上げていると感じた。
既に数ヵ国語に翻訳されている。
とりわけ東アジアでは幅広い読者に
長く読まれるに違いない。