武田砂鉄責任編集『開局70周年記念 TBSラジオ公式読本』(リトルモア、2021)

書店で平積みになっているのを見かけたり、
書籍ランキングで上位に入っているのを見ると
なんだかうれしくなる。
この本も編者のラジオ番組「アシタノカレッジ」
TBSラジオ金曜22時〜24時)で制作プロセスを聴いていた。
武田砂鉄責任編集『開局70周年記念 TBSラジオ公式読本』
リトルモア、2021)を読む。



「あとがき 武田砂鉄」から引用する。


  TBSラジオで番組を担当させてもらうようになってから、
  まだ3年にもならないが、
  その日の放送前の打ち合わせが早々と終わり、
  マイクの前で手持ち無沙汰になっているとき、
  ふと、「うわっ、TBSラジオで話してるよ」と思う。
  思ったからといって、何がどうなるわけでもない。
  でも、繰り返しそう思うのだ。
  感動でも恐怖でもなく、「うわっ、マジか」と浮つく感じ。


  4月末くらいだったか、そんな時間、
  つまり、手持ち無沙汰になっている時間に、
  2021年12月にTBSラジオが70周年を迎えると聞いた。
  スタジオの外から響く、神田伯山の、というか、
  笑い屋・シゲフジの過剰な笑い声を聞きながら、軽い気持ちで
  「なんか、記念の本でも作ったらいいんじゃないっすかね」
  と提案すると、番組プロデューサーが少しだけ身を乗り出して、
  たしかにそういうのもありかもしれない、と返してきた。
  しばらくは動いている気配がなかったのだが、
  ある日、「あれ、やりましょう」と企画が固まっていた。

                          (pp.358)


推しのラジオ番組を聴いているような、
正確に言えば、そのラジオ番組の舞台裏を聴いているような、
読み応えのあるインタビューが満載だった。
武田砂鉄の「聴く力」は本物だ。
「聴く力」に「編む力」「書く力」が連携して本書は完成した。
河出書房新社で編集者としてキャリアをスタートした砂鉄の、
「黒衣力」発揮の一冊。


(金曜「アシタノカレッジ」で「ニュース・エトセトラ」を担当する澤田大樹記者デビュー作。
 政治問題に真摯に取り組み、自分の言葉で報道する姿勢に共感する)