クリッピングから
毎日新聞2022年2月7日
「風知草」(特別編集委員 山田孝男)
神宮外苑 危うし
国民の献金・献木・奉仕で造営された
明治神宮外苑の樹木約1000本が、
外苑南側の再開発で切り倒されるーーと聞いた。
(略)
再開発エリアの古木1900本の52%にあたる1000本を切り、
高層ビルの周囲に緑を補う。ビジネス最優先、防災軽視、歴史無視の
<古い資本主義>であり、公共緑地をあえて創った
外苑整備の精神を著しく踏み外している。
◇
この事実を突き止めたのは都市環境計画の権威、
石川幹子・中央大学研究開発機構・機構教授(73)である。
石川は新宿区都市計画審議会委員。
業者が区に提出した資料と空撮写真を突き合わせ、
地上を歩いて木を1本ずつ調べて(毎木(まいぼく)調査)数え上げた。
切り倒される1000本には、
青山通りから聖徳記念絵画館へ続くイチョウ並木の一部が含まれる。
現地を見た。
メインストリートではなく、途中、西へ折れて
ラグビー場バックスタンド席入り口へ至る小並木の18本。
(略)
世間の関心が低い背景には五輪論争疲れ、コロナ疲れがあろうが、
なにせ情報が薄い。
計画は2015年に浮上した。
詳細が都民に示されたのが昨年の12月14日。
縦覧期間は2週間。
外苑を知り抜く石川だから問題点を洗い出せた。
それを手掛かりに問う。
環境重視に都知事は伐採を認めるのか。
社会的共通資本を重く見て<新しい資本主義>を探る首相はどうか。
◇
大正時代、神宮外苑整備のため、渋沢栄一とともに
献金・献木・奉仕の国民運動を支えた中心人物の一人は、
三井財閥の基礎を築いた三井家10代当主、
三井八郎右衛門高棟(はちろうえもんたかみね)だった。
こんな再開発でよいか。
計画の要にいる三井不動産社長に聞きたい。
(敬称略)
TBSラジオ「アシタノカレッジ」での武田砂鉄さんの解説、
文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ!」での
石川幹子さんの解説等を聴き、
ずいぶん乱暴な再開発計画であることを初めて知った。
伐採予定の古木1000本をひとりですべて調査して(毎木調査)、
計画への疑問を具体的に提示した石川さんの仕事に僕も共感する。