西原理恵子『りえさん手帖3 キラキラしてない編』
（毎日新聞出版、2021）を読む。
描き下ろし「キラキラしてない②」から
ネームを抜き書きする。
35年も漫画描いてられて
幸せな漫画人生だったなあ
ありがとうございます
描いてるだけで楽しくて
あっという間に10年20年30年
あれっと思ったら
脳みそも身体も
すっかりついてかなくなって
愛ちゃん（アシスタント）「よそ見して漫画描かないで下さい」
西原「ええええ」
前に市場のおばちゃんに笑われた
おばさん1「あんた そっからが長いぞね」
かつお 持っていけや
おばさん2「あたしゃ 腰が曲がってから
何十年ここに立っちゅうと思うで」
しいら 持っていきや
そーか そっからがながいのか
ありがとう ばあちゃん
夕方駅前で
西原「あれ どしたの？」
仲良しの友達がぼーっと座ってて
友達「食料品買い出ししてたら重すぎて持って帰れなくって」
「家族に電話したけど みんな忙しくてこれれないって」
「そしたら 泣けてきちゃって」
西原「うんうん」
「あのね」
「こっからがながいんだって」
友達「だよねー」
あはは
西原「ホントにねー」
「年とると一日は早いのに」
「不思議だねえ」
ブツブツ
ながいながい さんぽのはじまり
（pp.76-79）
（初出：毎日新聞2020年1月13日〜2021年4月5日掲載）
