彼女はいつも ひとつ多く せんべつをくれる(りえさん)

クリッピングから
毎日新聞 2021年2月14日朝刊
西原理恵子「りえさん手帖」
第173回 せんべつ


画を見て、台詞を読んで、
しばらくたって、心のどこかのネジがホッとゆるんでいる。
この作品の好きなところです。


    友達:人生の
       たいがいの仕事が
       終わった感じ
       やろうか

       こども
       育てて 
       親を
       みとって


  日本にずっと帰国してた
  友達がまた外国に戻る


    友達:2週間
       ホテルに
       監禁や

  りえさん:あのね

       昔の人が
       言いよったで

       ちょっと時間
       かかるけんど

       亡くなった
       人の声が
       聞こえん
       なったら

       その人は
       成仏したん
       やと

   友達: これ
       せんべつ

       チョコレート

  りえさん:いや私も
       チョコレート
       持ってきた


  おばさん あるあるの
  せんべつ交換して

  二人の合言葉はいつもコレ


    友達: 何をどうしたち
        親は死ぬ
        子供はどっか行く

        あっはっはっ

        あとは
        動かんなった
        自分の体が
        残っちゅうだけ

  りえさん: 動かんし
        重いわー

        はっはっはっ

    友達: じゃあ
        ウツ病
        先輩から
        もうひとつ

        何でも
        かんでも
        自分のせいに
        せられんで


  彼女はいつも
  ひとつ多く
  せんべつをくれる


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