クリッピングから
毎日新聞2021年2月13日朝刊
「今週の本棚」著者 今井(いまい)むつみさん
『英語独習法』(岩波新書・968円)
- 作者:今井 むつみ
- 発売日: 2020/12/19
- メディア: 新書
日本語の枠組みで考えない
英語学習の指南書が数多く出版される中、
昨年末の刊行以来、
新書の売り上げランキングで上位に名を連ねる。
著者は英語学者や英文学者ではなく、
認知科学が専門の慶應義塾大教授。
人が言語を習得するしくみや、心や脳の働きに注目し、
英語の学習法そのものを見直したのが特徴だ。
”歯ごたえのある” 例文も少なくないなど
「(英語学習書として)初心者向けではないはずだが、
反響の大きさに驚いた」と笑顔で語る。
言語の習得で重要だと強調するのが、
ある事柄を認識する思考の枠組みである「スキーマ」という概念だ。
(略)
この本では、日本語スキーマから離れ、
英語スキーマを身につけるための知識を具体的に伝授した。
例えば、swagger(胸を張ってずんずん歩く)という動詞。
日本語は動作の様子を副詞や副詞句で表現するため、
日本語の枠組みで捉えると「歩く」の意味が強く記憶に残る。
これが語彙(ごい)を増やす妨げになりうる、などとアドバイスする。
自身が高校まで学んだのは「受験英語」。
米国の大学院留学時代は、英語でリポートを書くのに必死だったと振り返り
「今も、英語学習者として苦労している」と語る。
(略)
英語学習者へのメッセージを尋ねると
「A journey of a thousand miles begins with a single step」
(千里の道も一歩から)と返ってきた。
「一歩一歩、ゆっくりと、時には立ち止まってもいいから進むことで、
英語も他のことも、達人への道が歩めるのではと思います。
(文・屋代尚則)
アマゾンで中味を調べたり、本屋で立ち読みしてみて、
お手軽な英語学習書ではないと思った。
でも、かえって気になって、迷った末に購入した。
著者インタビューを読み、
骨太なバックグラウンドから生まれた新書だと確認できた。
それなら信用できる。
本書が評判を呼んでいる秘密のひとつは
タイトルにあるのではないか。
「独習」はいまキーワードなのだと思う。
それに、著者の専門である「認知科学」が加わって、
多くの方の興味を引いているのではないか。
(この本も独学者にとても参考になる良書です)