今井むつみ『英語独習法』(岩波新書、2020)

クリッピングから
毎日新聞2021年2月13日朝刊
「今週の本棚」著者 今井(いまい)むつみさん
『英語独習法』(岩波新書・968円)


英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860)

英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860)


  日本語の枠組みで考えない


  英語学習の指南書が数多く出版される中、
  昨年末の刊行以来、
  新書の売り上げランキングで上位に名を連ねる。


  著者は英語学者や英文学者ではなく、
  認知科学が専門の慶應義塾大教授。
  人が言語を習得するしくみや、心や脳の働きに注目し、
  英語の学習法そのものを見直したのが特徴だ。


  ”歯ごたえのある” 例文も少なくないなど
  「(英語学習書として)初心者向けではないはずだが、
  反響の大きさに驚いた」と笑顔で語る。
  言語の習得で重要だと強調するのが、
  ある事柄を認識する思考の枠組みである「スキーマ」という概念だ。
  (略)


  この本では、日本語スキーマから離れ、
  英語スキーマを身につけるための知識を具体的に伝授した。
  例えば、swagger(胸を張ってずんずん歩く)という動詞。
  日本語は動作の様子を副詞や副詞句で表現するため、
  日本語の枠組みで捉えると「歩く」の意味が強く記憶に残る。
  これが語彙(ごい)を増やす妨げになりうる、などとアドバイスする。


  自身が高校まで学んだのは「受験英語」。
  米国の大学院留学時代は、英語でリポートを書くのに必死だったと振り返り
  「今も、英語学習者として苦労している」と語る。
  (略)


  英語学習者へのメッセージを尋ねると
  「A journey of a thousand miles begins with a single step」
  (千里の道も一歩から)と返ってきた。
  「一歩一歩、ゆっくりと、時には立ち止まってもいいから進むことで、
  英語も他のことも、達人への道が歩めるのではと思います。

                          (文・屋代尚則)


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アマゾンで中味を調べたり、本屋で立ち読みしてみて、
お手軽な英語学習書ではないと思った。
でも、かえって気になって、迷った末に購入した。
著者インタビューを読み、
骨太なバックグラウンドから生まれた新書だと確認できた。
それなら信用できる。


本書が評判を呼んでいる秘密のひとつは
タイトルにあるのではないか。
「独習」はいまキーワードなのだと思う。
それに、著者の専門である「認知科学」が加わって、
多くの方の興味を引いているのではないか。


(この本も独学者にとても参考になる良書です)