喜多あおい評:小林昌樹『調べる技術ー国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』(皓星社、2022)

クリッピングから
朝日新聞2023年2月18日朝刊
読書欄「売れてる本」 喜多あおい(リサーチャー)評
『調べる技術ー国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』小林昌樹<著>



  参照すべき情報源と出会える


  「調べ物においてきちんと答えを出す」には
  「情報源」を制するのが近道。
  「検索語」だけに頼っていては
  雑多な情報の中で迷子になるばかりである。
  「調べた情報」をテレビ番組などに提供するリサーチャーは
  「情報源」が生命線。
  仕事柄、司書のレファレンス(調べ物相談)に助けられた経験は多い。


  特に著名人の家族史をたどる番組の取材では、秋田・京都……
  多くの地域図書館で、調査に活路を見いだしてもらった。
  館内蔵書にとどまらず、インターネット検索でも
  「アタリをつける」勘どころがすごいのだ。
  膨大な資料と対峙(たいじ)する国会図書館司書であれば、
  そのテクニックの集積も更にすさまじかろう。


  本書にはそんな秘伝・奥義が、ズラリと並んでいる。
  比喩ではなく、巻末の「索引」に本当にズラリと並んでいる。
  実は私、「索引」付きの本を収集する癖があり、
  三千冊くらいは手元にある。
  「索引」には、ちょっとうるさい。
  「索引」の構成や語句選びからは、
  著者のメッセージ、本のスタンスなどが浮かび上がり、
  本文を読む前に内容を想像するのが楽しい。


  で、本書の「索引」であるが、ブラボー!なのだ。
  本文へのワクワクを強く誘う。
  いくつか紹介すると……
  「ドキュバース(文章宇宙)」といった難解用語から
  「アイドル研究」など身近な話題、
  「わらしべ長者伝」のようなオリジナル技法、
  「全米が泣いた」という、「なぜこの本で?」といったトピックスまである。


  多彩な「参照すべき情報源」と邂逅(かいこう)できる本書は、
  誰にとっても頼もしい。
  多数の固有名詞の採録は、実用書のみならず、
  「調べもの史」の読み物としてもとても面白かった。
  今や「調べる」は日常生活の中に完全に溶け込み、「一億総検索時代」。
  手軽に情報を手にできるからこそ、
  「レファレンス力(りょく)」を磨いて、
  「確かな情報」が得られる「情報源」へのアプローチを究めたい。


    ◆皓星(こうせい)社・2200円=6刷2万5千部。昨年12月刊。
     「リポートを書く学生や、調べ物をする企業人などに読まれている」
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