谷川浩司『藤井聡太はどこまで強くなるのかー名人への道』(講談社+α新書、2023)

クリッピングから
朝日新聞2023年2月18日朝刊
読書欄「著者に会いたい」
藤井聡太はどこまで強くなるのかー名人への道』
将棋棋士、十七世名人 谷川浩司さん(60)



  「指さなかった手」の蓄積


  21歳で名人の座に就いてから40年。
  今年、その最年少記録が破られるかもしれない。
  藤井聡太竜王が、A級順位戦
  名人への挑戦権獲得に近づいているからだ。
  「昨年までは複雑な思いがあったが、
  20歳で将棋界を背負っている藤井さんに破られるなら、
  光栄なことではないかと思うようになった」
  (略)


  …初めて名人を獲得した時は
  ナンバーワンになったとは思えなかった。
  「名人になって、ようやくベスト5に入ったぐらい。
  (竜王戦の前身の)十段戦王将戦のリーグ戦では陥落していた」。
  1997年に5期目の名人獲得で永世名人の資格を得たが、
  その後は3勝2敗で七番勝負を制するまで
  「あと1勝」としてからの連敗を3回も経験。
  「一番多く出たタイトル戦だが、悔しい思いをした棋戦でもある」
  (略)


  特に持ち時間が長い2日制のタイトル戦を
  数多く経験したことで、強くなったと分析する。
  「藤井さんは、結論が出ない序盤の局面でも1時間考えられる。
  実際に差した手は他の棋士でもわかるが、
  指さなかった手は藤井さんの頭の中だけに残る。
  その蓄積が大きい」


  昨年60歳になったのを機に、
  永世称号の十七世名人を名乗るようになった。
  (略)


                   (講談社+α新書・990円)

                      文・写真 村瀬信也