パタヤで体感したベルリン


ベルリンスクールパタヤにやってきた。
5月から始まる四期生の募集と、
新設の奨学生制度の案内をするのが主目的である。
と同時に、
「そもそもベルリンスクールってなんだろう」
と疑問や興味を持つ人たちのために、
実にベルリンスクールらしい方法でセッションを行った。



  (ベルリンスクール事務局のベンことベンジャミン)


事務局のディレクター、
僕の友人であるベンのイントロダクションの後で
ヴァイオリニストのMiha Pogacnikが登場。
スロベニアの文化大使であり、
ベルリンでコンラッド学長が定期的に行う
「プレジデント・レクチャー」の講師でもある。


僕はベルリンでのレクチャーに招待されたが、
そのときは時間も費用も持たず参加することは叶わなかった。
そのレクチャーを思いがけずパタヤで受けられることになった。



  (講師のヴァイオリニスト、Miha Pogacnik)


Mihaの方法は聴衆の度肝を抜くものだった。
Polyphonic Leadership(多声音楽のリーダーシップ)
と自身が名付け、
バッハの楽曲をその場で演奏しながら、
人間が生涯に経験する精神的成長を説明し、
音楽の中に陰陽が拮抗しながら存在することを証明していく。


Mihaの言うPolyphonic Leadershipは
ゲーテの創造的諦観(productive resignation)と通じるもので、
人々に命令することなく、
人々が自発的に行動するようにリードしていくことであった。


「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)


Reflections on Japanese Taste: The Structure of Iki

Reflections on Japanese Taste: The Structure of Iki


僕のベルリンスクールにおけるMBA論文が
「コミュニケーションを再定義する粋と野暮」だった。
九鬼周造先生の著書『「いき」の構造』には
「いき」を規定する三要素のひとつとして「諦観」が含まれる。


Mihaの創造的レクチャーに参加するうちに、
ゲーテの創造的諦観が心に強く刻まれていった。
漱石の「則天去私」と通じる道でもあるのか。



  (Mihaは客席にどんどん降りていき、
   観客にも声を出させることで参加・体験させていく)


アドフェストも三日目になると、
参加者のみなさんも大分疲労がたまってくるのか、
午前中のセッションをパスする人が増えてくるのが常である。


しかし、僕はいつも思うのだが、
そうした空白のような時間に案外大切な教えが転がっており、
それを見逃すか体験するかは天地の開きがあるのだ。


僕は身びいきでなく、
今年のアドフェストのセミナーにおける白眉は
Mihaのセッションであったと思っている。



  (最後の一分までムダにせず、
   演奏で観客を巻き込み、リードしていく)


事実、セッション終了後、
僕がベルリンスクール第一期卒業生であることを知る数人から
Mihaのレクチャーによって
ベルリンスクールがどんなものか初めて体感できたと反響をもらった。
音楽と言葉の力は偉大である。


http://www.berlin-school.com/en;news-events;video-photo-gallery.htm#top


ベルリンスクールのサイトに行けば、
その一端を動画で味わえる。
コンラッド学長がインタビューするTent Talkシリーズとして
Mihaの講義風景、インタビューが収録されている。
アドフェストで見落とした人、
アドフェストに参加していない人で興味のある人は訪れてほしい。


http://www.berlin-school.com/en;executive-mba;scholarships.htm


ベルリンスクールでは
3月24日(火)まで奨学生1名を募集している。
48,500ユーロの授業料がすべて無料になる。
後は格安航空券とバックパッキングでなんとかするさ
と向学心に燃える方は上記のリンクから情報を得てほしい。
チャンスは自分の意志でつかむものだ。
じっとしていて向こうから転がってくるものではない。



ちなみにベルリンスクールのスローガンは
"Bring The Fire(炎を運べ)"である。


  http://www.adfest.com/WINNER.pdf


アドフェストの最終授賞結果が気になる人は
上記のリンク先で入手できる。
受賞者のみなさん、おめでとうございました。