ベルリンスクールがパタヤにやってきた。
5月から始まる四期生の募集と、
新設の奨学生制度の案内をするのが主目的である。
と同時に、
「そもそもベルリンスクールってなんだろう」
と疑問や興味を持つ人たちのために、
実にベルリンスクールらしい方法でセッションを行った。
(ベルリンスクール事務局のベンことベンジャミン)
事務局のディレクター、
僕の友人であるベンのイントロダクションの後で
ヴァイオリニストのMiha Pogacnikが登場。
スロベニアの文化大使であり、
ベルリンでコンラッド学長が定期的に行う
「プレジデント・レクチャー」の講師でもある。
僕はベルリンでのレクチャーに招待されたが、
そのときは時間も費用も持たず参加することは叶わなかった。
そのレクチャーを思いがけずパタヤで受けられることになった。
(講師のヴァイオリニスト、Miha Pogacnik)
Mihaの方法は聴衆の度肝を抜くものだった。
Polyphonic Leadership(多声音楽のリーダーシップ)
と自身が名付け、
バッハの楽曲をその場で演奏しながら、
人間が生涯に経験する精神的成長を説明し、
音楽の中に陰陽が拮抗しながら存在することを証明していく。
Mihaの言うPolyphonic Leadershipは
ゲーテの創造的諦観(productive resignation)と通じるもので、
人々に命令することなく、
人々が自発的に行動するようにリードしていくことであった。
- 作者: 九鬼周造
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/09/17
- メディア: 文庫
- 購入: 15人 クリック: 50回
- この商品を含むブログ (90件) を見る
Reflections on Japanese Taste: The Structure of Iki
- 作者: Kuki Shuzo,Sakuko Matsui,John Clark
- 出版社/メーカー: Education Enterprises
- 発売日: 1997/07/01
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
僕のベルリンスクールにおけるMBA論文が
「コミュニケーションを再定義する粋と野暮」だった。
九鬼周造先生の著書『「いき」の構造』には
「いき」を規定する三要素のひとつとして「諦観」が含まれる。
Mihaの創造的レクチャーに参加するうちに、
ゲーテの創造的諦観が心に強く刻まれていった。
漱石の「則天去私」と通じる道でもあるのか。
(Mihaは客席にどんどん降りていき、
観客にも声を出させることで参加・体験させていく)
アドフェストも三日目になると、
参加者のみなさんも大分疲労がたまってくるのか、
午前中のセッションをパスする人が増えてくるのが常である。
しかし、僕はいつも思うのだが、
そうした空白のような時間に案外大切な教えが転がっており、
それを見逃すか体験するかは天地の開きがあるのだ。
僕は身びいきでなく、
今年のアドフェストのセミナーにおける白眉は
Mihaのセッションであったと思っている。
(最後の一分までムダにせず、
演奏で観客を巻き込み、リードしていく)
事実、セッション終了後、
僕がベルリンスクール第一期卒業生であることを知る数人から
Mihaのレクチャーによって
ベルリンスクールがどんなものか初めて体感できたと反響をもらった。
音楽と言葉の力は偉大である。
http://www.berlin-school.com/en;news-events;video-photo-gallery.htm#top
ベルリンスクールのサイトに行けば、
その一端を動画で味わえる。
コンラッド学長がインタビューするTent Talkシリーズとして
Mihaの講義風景、インタビューが収録されている。
アドフェストで見落とした人、
アドフェストに参加していない人で興味のある人は訪れてほしい。
http://www.berlin-school.com/en;executive-mba;scholarships.htm
ベルリンスクールでは
3月24日(火)まで奨学生1名を募集している。
48,500ユーロの授業料がすべて無料になる。
後は格安航空券とバックパッキングでなんとかするさ
と向学心に燃える方は上記のリンクから情報を得てほしい。
チャンスは自分の意志でつかむものだ。
じっとしていて向こうから転がってくるものではない。
ちなみにベルリンスクールのスローガンは
"Bring The Fire(炎を運べ)"である。
http://www.adfest.com/WINNER.pdf
アドフェストの最終授賞結果が気になる人は
上記のリンク先で入手できる。
受賞者のみなさん、おめでとうございました。