村上春樹の書き下ろし長編「1Q84」(全二巻)、
計1,055ページを読み終える。
なんとも奇妙な読後感の物語だった。
なによりタイトルがそそる。
1Q84ってなんなんだ?
オウム真理教の麻原彰晃をモデルにしたとおぼしき人物が
この物語のメインキャストのひとりとして登場する。
以前、村上がオウム事件の関係者にインタビューし、
「アンダーグラウンド」を著したとき、
この小説家の時代感覚をおもしろいと思った。
先頃のエルサレム賞のスピーチ「壁と卵」でも、
作家として同時代を生きていることを証明したように思う。
その村上がオウム事件を下敷きのひとつに使いながら
独特の物語を紡ぎ出したことは注目に値する。
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自殺、殺人、ドメスティックバイオレンス、
虐待、レイプなどの場面が
次から次へと描写されるにも関わらず
いっこうに血の匂いがしないのが村上春樹の作品らしい。
主人公、天吾と青豆の純愛。
別れと再会。死と再生。
普遍のテーマを
村上流にどこまでオリジナルに書けるかが勝負であった。
僕はたまたまBOOK2を先に入手したのでそのまま読み始め、
BOOK2からBOOK1へと読み継いでいった。
偶然ではあったが、さかさまに読んでみたらどうだろう
と半ば遊びの気分だった。
そのときは本屋を三軒まわって、
BOOK2しか見つからなかったのだ。
おそらく作者はそんな順番で読んでほしくはなかったろうから、
もう一度、作者の構想通り
BOOK1からBOOK2に読み直す必要があるだろう。
しかし、順序を逆にして読んでも、
この作品「1Q84」はおもしろかった。
妄想力と、下敷きにしている事実のブレンドの配合が絶妙である。
近松門左衛門の「虚実皮膜の間」の芸か。
村上春樹はいま作家として円熟し、脂が乗っている。