めざすは「旅館のうまい朝ご飯」

木金と仲間で集まりご馳走が続いたので
週末は素食でバランスを取ろう。
行きつけのスーパーS屋に自転車で買い出しに行く。
買い出しはもっぱら僕の担当である。
四季折々どんな品物が入荷しているか、
どれくらいの値段をつけているか、
生活感覚を養うのにこれ以上のトレーニングはない。



かぶと栃尾の油揚げを買って味噌汁を作ろう。
少しクセのある緑黄野菜を食べたいから春菊で胡麻和えだ。
胡麻が残ったすり鉢にご飯をほんの少々入れて
台所仕事の合間に食べる。
祇園のはずれで小料理屋を営んでいたおばあちゃんYはんに
教わった「すり鉢ご飯」だ。
残ったわずかの胡麻もムダにしない暮らしの知恵なのだ。


京都のおばあちゃんたちは僕の師匠である。
逆立ちしたって、あの生活の達人たちの足下にも及ばない。



  (同居人が購入した黒の楽焼き鍋。ずっしり、6.6kg。
   高熱でもヒビが入らぬようまずはおかゆを炊いてなじませる)


10年ほど同居人に仕込まれたおかげで、
週末の賄いメシは僕に任せてもらえるようになった。
最初のうちはなにがなんだか分からなかったが、
そのうち出汁がすべての中心にあり、
出汁をきちんと取れば味噌汁も煮物もうまく作れることが分かった。
焼く、蒸す、煮る、炒める、炊くなど
基本動作が身に付いてくれば面白くなってくる。




  (魚沼栃尾又温泉・宝巌堂のうまい朝ご飯一日目)


僕の目標は「旅館のうまい朝ご飯」である。
ご飯と味噌汁、焼き魚におひたし、漬け物。
玉子、ベーコン、ハムなどを使った一品。
きんぴら、ひじき煮を付けてもいい。




  (魚沼栃尾又温泉・宝巌堂のうまい朝ご飯二日目)


料理することは楽しい。
材料を吟味し、段取りよく、火や水や油の力を借りて、
素材の旨味を引き出してやればいい。
ときに失敗しても、次に成功するための経験だ。
食べ物が入手できる幸運と
料理を味わえる健康に感謝していただこう。