湯浅誠『反貧困ー「すべり台社会」からの脱出』(2008)を読む。
既に出版から二年、遅ればせではあったが、
本書の視点・主張は現在でも少しも色あせていない。
堤未果『貧困大国アメリカ』『貧困大国アメリカII』を読み、
アメリカの貧困の現実に目を開かれたこと、
友人ブロガーharuharuyさんの感想も気になっていた。
- 作者: 湯浅誠
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/22
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日本社会のなにかがおかしくなってきたと感じている。
駅のホームレスが世に言う浮浪者、落伍者だけとは思えぬほど
多彩多様な人たちに広がってきた。
契約を打ち切られた人、退職を余儀なくされた人の再就職が
より困難になってきた。
大学生・大学院生が就職面接で数十社落とされることも
例外ではなくなってきた。
そうしたすべての人たちが自分の義務を放棄し、
わがままで高望みしているだけだとはどうも思えない。
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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国際競争力のある政府・企業。
自立と責任がひとりひとりに要求される社会。
官から民へ。自由競争が新秩序を生む。
そうしたスローガンが繰り返される中で、
日本はいつの間にか「すべり台社会」が進んでいる。
まさかの時に受けとめてくれるはずの
セーフティ・ネットもほころんでいる。
湯浅は「溜め」を作れるつながりが
貧困問題解決の鍵であると本書で主張する。
「溜め」とは金銭・経済の「溜め」であり、
家族や友人や仲間たちとの関係による人間同士の「溜め」であり、
国が憲法の精神を遵守して保障する社会の「溜め」である。
- 作者: 堤未果
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日本の貧困を直視することは胸が痛むことである。
できればそんな事実は知らないでいられるならと思わないでもない。
しかし、僕たちがいま「ゆるやかな連帯感」を欲する心理には、
こうした社会的困難を見過ごせない「集合としての善意」が
働いているのではないかとも思えるのだ。
貧困は他人事ではない。
(文中敬称略)