中島らも+小堀純『"せんべろ”探偵が行く』(2003)を読む。
「せんべろ」とは千円でべろべろになれる店の意味で、
らも、小堀(編集者)、大村アトム(らもマネジャー)の三人が
その条件の名店を探す旅を続ける。
初出は「オール讀物」(2001-2003)。
らもが亡くなるのは翌2004年7月のことである。
- 作者: 中島らも,小堀純
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/10/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 47回
- この商品を含むブログ (61件) を見る
まるで「東海道膝栗毛」の珍道中のような抱腹絶倒の一巻。
大阪に始まり、横浜、東京、名古屋、博多、金沢へと旅が続く。
発言回数が一番少ない中島らもの一言一言に含蓄があり、
小林秀雄が指摘するところの物が見えすぎた人、
吉田兼好を連想した。
(クイズ: 音符のようなこの物体はなんでしょう?)
単なる酔っぱらいたちの戯言のようでいて、
ときおり、らもの洞察がポロリこぼれる。
無論、知的な装いなどおくびにも出さない。
時に痴的に振る舞うのは関西人の照れなのか。
十条の名店「斎藤酒場」に対するらものコメントが印象的で、
その文章を引用した浜田信郎の人気ブログ「居酒屋礼賛」を読み、
本書にたどり着いた。
アマゾンのマーケットプレイスでも希少本扱いである。
らもの小説、エッセイをもっと読んでみたくなり、
文庫本を何冊か求めた。
多作の人であり、若者たちの人生相談にものっていたことを知る。
らもたちが訪れた酒場をいつか自分も行ってみたいものだと
本書を読みながら僕も空想、妄想の旅に出ていた。
(文中敬称略)