地元客に愛されている店で


セミナーやフィルムを休憩なしに見続けるときは
地下の売店でサンドイッチと飲み物を買ってきて
座席から動かずに食事を済ませる。
そうして一日が終わったら、街を歩く。
表通りだけでなく裏通りも歩く。



地元の人たちがうれしそうに食事していて
観光客らしき人がいない小ぶりのレストランがあれば
そこに入ってみる。
こうした店には不思議に日本人は誰一人として来ていない。



予約もなしに席に案内してもらうと、
黙ってシャンパンとサラミ、ピクルスが出てくる。
お、これはいい感じだね。
メインディッシュまでのつなぎにサラダ、肉のパテが出る。
どれもこれもうまい。
スモークサーモンのマリネには
小さなグラスでよく冷えたウォッカ
注文しなくても一連のコースになっている。
これがフランスの粋だね。



メインはツナのステーキを取った。
香草が添えられ、淡泊な味わいは南フランスの赤ワインとよく合う。
これだけ満足のいく食事で勘定は驚くほど安い。
少し余分にチップを置いて同僚と席を立つと、
ウェイトレスも隣の客も
「ウチの店のよさを分かってくれたのかい?」
という表情で僕たちを見送ってくれた。