大竹文雄『競争と公平感』(2010)


大竹文雄『競争と公平感ー市場経済の本当のメリット』(2010)を読む。
タイトルがなかなかいいじゃない、というのが僕の第一印象。
題名の付け方が本の売れ行きを左右することがある。
(ま、ときには題名にだまされて購入してしまうこともある。)
腰巻のコピー「なぜ競争しなくちゃいけないの?」も
なかなか人のインサイトをつかまえている。


競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)


普段、新聞を読んだりニュースを見ていても
すっきり解決しない疑問が僕にはある。
「なぜ?」と思うが日々の忙しさに流されて
疑問を追求しないままになることも多い。
うっかりすると、メディアで報道していることが

そのまま自分の思い込みになり、固定観念になり、
気づくと自分の意見であるかのように人に話してしまう。



僕は大竹の本を読みながら
そうした思い込みをいくつか修正することができた。
例えば、こんな疑問だ。


  ●このところ非正規社員の割合が増え問題になっているが、
  どうしてそうなったのか?


  ●正規社員はよほどの理由がなければ解雇できず終身雇用になるが、
  どうしてそうなったのか?



第一の疑問については、大竹はデータから語り出す。
20代半ばから30代半ばまでの男性の非正規雇用比率は、
90年代半ばまで約3%であったが2008年には約15%、
つまり5倍に増加した。
その理由を大竹は分かりやすく説いていく。
詳細はここでは引用しないが、
理由のひとつが「技術革新とグローバル化の進展」であることに
僕は膝を打った。



第二の疑問については、
大竹は民法と労働法の歴史を振り返る。


   つまり、もともとの民法の規定であった
  「解雇の自由を認めた期間の定めのない雇用」という雇用契約は、
   定年までの有期雇用契約になってしまった。
   その結果、日本では本来の意味での
  「有期雇用契約」という上限三年の雇用契約
   定年までの有期雇用契約という「期限のない雇用契約」の
   二つに両極化してしまったのである。


                    (本書p.163より引用)


         
                 (平井美智子「青い夏」2011)


250頁弱の小冊子だが
市場経済について充実した講義を受けた読後感だ。
しばらく積ん読だった本書だったが、
ブロガー仲間のharuharuyさんの記事で思い出し、
このところ増えてきた出張の合間に通読した。


(文中敬称略)