土屋耕一『コピーライターの発想』(1984)


土屋耕一『コピーライターの発想』を読む。
土屋(故人)は今年50周年を迎えた
東京コピーライターズクラブ会長を務めていた。
多くの会員から敬愛されているコピーライター先達のひとりである。



ある日の昼飯の帰り道、
新橋SL広場で開催中の古書市をぶらぶら覗いていたら、
この本が目に飛び込んできた。
どれでも一冊100円、新書の古書コーナーにひっそり置かれていた。
出版された1984年、きちんと読んだかどうか、とんと記憶にない。
通読してみると当時一般読者が持っていたであろう、
「コピーってなに?」「コピーライターってどんな発想してるの?」
という素朴な疑問に土屋が誠実正確に答えようとしている印象を受けた。



考えるときは15分集中しダメだったら仕事からいったん離れて
しかるのち再び15分集中という手法。
頭と手はお互い関係しているから上等な石けんで手を洗ってやると
発想のための下地を頭が作ってくれるという示唆。
この本自体が軽妙洒脱な土屋文体で書かれていることが
なんだか愉快なことに思えた。



広告やコピーにまったく縁のない読者にとっては
お手軽な発想術が公開されている訳ではないから
はぐらかされた気持ちが残ったかもしれない。
でも、発想とはそもそもそういうものかもしれない、
と希有のコピーライターは僕たちに伝えている。


wikipedia:土屋耕一


(文中敬称略)