柴田武監修・武藤康史編『明解物語』(2001)


柴田武監修・武藤康史編『明解物語』を読む。
昭和18年三省堂が出版した『明解國語辭典』から
現代語中心の小型国語辞書の歴史が始まった。


明解国語辞典

明解国語辞典


『明解國語辭典』を独力で書き、
その後『三省堂国語辞典』を完成した見坊豪紀
新明解国語辞典』を誕生させた山田忠雄
二人の主幹を軸に、当時出版のメドもないまま
インタビューを続けた武藤康史


明解物語

明解物語


以来12年の歳月を経て、創業120年記念として三省堂が出版した。
この出版には版元に反対の声があったらしい。
見坊、山田はともに東大文学部国文学科・橋本進吉の元で学んだ。
見坊が発案した『明解國語辭典』を山田は校閲などの裏方仕事で支えた。


歴史のある一時点で二人は袂を分かつ。
生々しい舞台裏を公にするのを嫌った人も三省堂にはいたのだろう。
辞書を編む方法論の違った見坊、山田の後を継ぎ、
いまも『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』は新たな読者を獲得している。


新明解国語辞典 第七版

新明解国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版


日本の小型国語辞書史とも言える領域を
飽くことなく追究しているのが編者の武藤だ。
事実を積み重ね、関係者へのインタビューを地道に重ねることで
スリリングなノンフィクションに仕上がっている。
佐々木健一『辞書になった男』と併せて読むといっそう面白い。



(付記)


……と書いた後でアマゾン・マーケット・プレイスを覗いたら
なんと25,190円の価格が付いていた!
これでは気楽には買えません。
僕が4年前に買ったときには定価の3,400円より少々安かった。
どうぞ図書館で閲覧するか、借りてお読みください。
『明解國語辭典』(復刻版)も欲しいけれど、
12,000円以上の価格が付いていて僕にはとても買えない……。


(文中敬称略)