原田大助/山元加津子『さびしいときは心のかぜです』(1995)


勤めている会社で社員のこどもたちに
会社見学をしてもらうイベントがあった。
小学校低学年のこどもたちに絵本の読み聞かせをするので
不要になった本を寄付してほしいと呼び掛けがあった。


さびしいときは心のかぜです

さびしいときは心のかぜです


不要にはなっちゃあいないが、
僕が好きなあの詩集は確か何冊か買って
当時友人にあげたはずだった。
勉強部屋の本棚を探ると、二冊残っていた。
一冊差し上げよう。
原田大助/山元加津子『さびしいときは心のかぜです』(樹心社、1995)。



会社で支給される手帳に
毎年のように原田大助くんの詩を書いていた。


   遠い道でもな
   大丈夫や
   一歩ずつや
   とちゅうに
   花もさいているし
   とりもなくし
   わらびかて
   とれるやろ



大ちゃんは六年生のとき、
大阪の養護学校から石川の錦城養護学校に転校してきた。
中学部のとき、山もっちゃんこと山元加津子教諭と出会い、
二人で創作活動を始めた。
大ちゃんの詩と絵が一冊の本にまとまったのが
『さびしいときは心のかぜです』だ。


社会に出て仕事をしていると
誰にだってへこたれそうなときがあるでしょう。
(主婦・主夫、こども、お年寄りだってまったくおんなじですね)
僕ももちろんそうだった。


そんなとき、手帳に書いた大ちゃんのこの詩を読んで、
「遠い道でもな 大丈夫や 一歩ずつや」
と心の中で何度も唱えていた。



すると、仕事の重たさは変わらないはずなのに、
抱えている重量が少し減った気がして
もうちょっとだけ頑張ってみようか、と思えた。
大ちゃんの、不思議な、詩の力だ。


一冊余分に残っていたこの本を
ボランティアを引き受けている人事のTさんに渡す前に、
最初から一通り読み返してみた。


大ちゃんの詩の一編一編が
20年以上の時を経てもみずみずしかった。
僕が好きな「遠い道でも……」の次の頁に載っていた詩に
目が止まった。


   きれいな
   花見て
   月も見て
   ゆっくりしてるのが
   一番です。



なんかいいなぁ、と思って味わっていたら、
巻末に文章を寄せている
赤井朱美さん(石川テレビ・プロデューサー)の
お気に入りの一編でもあることを知った。


大ちゃんの詩集、
当日来訪したこどもたち、
読み聞かせをしたボランティアの社員のみなさんに
気に入ってもらえたらいいんだけどね。


僕も久しぶりに本棚から取り出して、
それだけで、ちょっとうれしい気持ちです。