バアさんにとって日々の童話なのです(諏訪八枝子)


スクラップブックから
朝日新聞2018年9月26日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
手を振り続けよう
静岡県三島市 諏訪八枝子 主婦 94歳


   道路を隔て、駐車場を隔てた先に立つ
   マンションの2階のベランダから、今朝も手を振るSさん。
   私も台所の窓から手を振って応える。
   元気らしい。


   近くに住むSさんのご両親とは知り合いだったが、
   Sさんのお勤め先もお年も知らない。
   でも以前から、夜にベランダでたばこを吸う姿は
   見かけていた。
   (略)



(楽浪さん、近頃は窓辺で居眠りもするようになりました)


   Sさんがベランダに立つ時間は、いつも同じ。
   私も待っていたように手を振り、
   それだけでほっとするようになった。
   (略)


   息子のようにかわいいSさん。
   これは、バアさんにとって日々の童話なんです。



短編小説のような諏訪さんの投稿でした。
どうぞお元気でお暮らしくださいね。