朝まで語り合ったシリアを覚えているだろう?


スクラップブックから
朝日新聞2018年10月17日朝刊
特派員メモ ダマスカス
残っていた安宿


   シリアの首都ダマスカスを訪れた。
   バックパックを背負って旅してから、13年ぶりだ。
   中心部は多くの買い物客でにぎわい、
   内戦下にあるのが信じられないほどだ。
   とはいえ、外国人旅行者を目にすることはない。
   当時泊まった外国人相手の安宿もなくなったのだろう。
   当時のメモに名前が残っていた。


   「屋上屋根なし125シリアポンド。
   マットレスに虫。朝も日差しが強くて眠れない」とある。
   日本円で300円以下だったと思う。
   ダメもとで通訳の男性に尋ねたら、
   なんと営業しているという。
   (略)


   内戦が始まり、外国人が姿を消し、
   代わりにシリア人の学生やビジネス客が
   利用するようになった。
   従業員のバシャール・アカッドさん(42)に
   「残っていてうれしい」と伝えると、悲しそうな顔をした。


   「昔はいろんな国籍の人が集まり、朝まで語り合った。
   そんなシリアを覚えているだろう?」
   胸が締め付けられた。
                  (郄野裕介)



13年前のダマスカスの安宿には、
国籍の異なる旅人同士のコミュニケーションがあった。
一方現在でも中心部は現地の買い物客でにぎわう。
内戦下の首都はどんな様子なのか。
そこで暮らす人々の心理状態はどんなものなのか。