スクラップブックから
朝日新聞2019年1月24日夕刊
割れたジャッジの重み 元ボクサーが描く
1966年に静岡県で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、
いったん再審開始が認められた後に取り消された袴田厳さん(82)。
元プロボクサーの袴田さんを主人公にした漫画を、
日本プロボクシング協会(東京都)が制作し、
2月からホームページ等で連載する。
描くのは元ボクサーで漫画家の森重水(もり しげみ)さん(30)だ。
タイトルは「スプリット・デシジョン〜袴田厳
無実の元プロボクサー〜」。
日本フェザー級6位の袴田さんは引退後に逮捕され、
無実を訴えながらも死刑が確定。
約半世紀を獄中で過ごし、静岡地裁の再審開始決定で釈放された。
昨年、東京高裁は釈放を維持したまま再審開始決定を取り消し、
審理は最高裁に移っている。
(略)
登場人物の一人が、
一審の静岡地裁で裁判官だった熊本典道さん(81)。
熊本さんは退官後、当時の経緯について
「裁判官3人の合議の結果、2対1で敗れ、
不本意な判決を書いてしまった」などと語っていた。
ボクシングではジャッジの判定が「2-1」で割れることを
スプリット・デシジョンという。
森さんは「裁判官の判断一つでまさに人生が変わった。
その重さをタイトルに込めたかった」と話す。
(略)
日本プロボクシング協会理事・事務局長の新田渉世さん(51)は
「一度は無実の可能性が高いと司法に認められた袴田さんが、
いつ再収監されるか予断を許さない。関心を持ってほしい」と話す。
作品は2月15日から毎月1回。
協会ホームページなどで、計6回連載する予定。
(高橋淳)
元プロボクサー袴田さんの裁判を
日本プロボクシング協会が支援しているのが面白いと思った。
元ボクサーの漫画家・森重水さんを起用し。
関係者の取材、資料に基づき、
漫画というメディアで発信するアイデアにも柔軟性を感じる。
どんな人たちが、どんな動機で動いているのだろうか。