「今、不登校中なんです」(原田弘子さんの先輩Aさん)

スクラップブックから
朝日新聞2019年6月13日朝刊
読者投稿欄「ひととき」 「楽しんでおいで」の力
横浜市 原田弘子 介護福祉士 53歳


   憧れる先輩がいる。
   4人の子を育て上げた6歳上の女性、Aさんだ。
   最もすごいと思ったのは、
   娘さんがプチ不登校になったときだった。
   「学校に行きたくないなら行かなくてもいい。
   その代わり、生活リズムは変えるな」という方針だった。


   他の3人の子と同じ時間に起床し、家で勉強する。
   手伝いもする。
   買い物に同行させ、知り合いに会って
   「学校はお休み?」と聞かれると、
   Aさんは「今、不登校中なんです」と答えた。
   Aさんいわく、不登校はちっとも恥ずかしいことではない、
   人様に堂々と言えないな学校に行け、と。
   娘さんは2カ月で学校に戻った。


   我が家の子どもたちもAさんが大好き。
   長女が小学生の頃、
   「お母さんは、学校に行くこと行ってらっしゃいの後に、
   気を付けてねって言うでしょう。
   Aさんは楽しんでおいでって言うんだよ」と言われた。
   「そう言われるとね。学校が楽しくなるの」。
   それから私は「気を付けてね」だけでなく
   「楽しんでおいで」も使うようになった。


   先日、旅行の歳、22歳の長男に
   「行ってくるね」とLINEすると
   「楽しんできて」と返ってきた。
   確かに楽しい気持ちになった。


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Aさんのような母親がいれば
子どもが不登校を克服できることもあるんだな、と感心した。
もし親が子どもの状態より世間体を気にしたら、
子どもにすぐに気取られ状況は悪化するに違いない。
「今、不登校中なんです」と知り合いに堂々と答えられる姿に
教えられる。


生活リズムを変えないことも大事なんだね。
昼夜逆転の生活を続ければ
大概の人間は心身の状態が悪くなるものだ。
プチ不登校のこどもに、具体的で有効な指示だと思った。


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