吉野源三郎/羽賀翔一『漫画・君たちはどう生きるか』(マガジンハウス、2017)

公立図書館でベストセラーの本を借りると面白いことがある。
待機の人が二桁三桁いるので、いつ読めるか分からない代わりに、
ひょんなタイミングで取り置きメールの連絡がやってくる。
吉野源三郎原作/羽賀翔一画『漫画・君たちはどう生きるか
(マガジンハウス、2017)を読む。


漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか


2年前にベストセラーになり、いまでも人気のある本だ。
1937年に出版された本がなぜ80年後に再び読まれるようになったのか。
ブームを引き起こした人々の深層心理を探ってみるのは実に興味深い。


主人公・コペル君が友人のガッチン、浦川君、水谷君を裏切ってしまい、
自己嫌悪に苛まれる場面が本書の最大の読みどころだ。
元編集者のおじさん(吉野の分身?)はやや説教臭いところがあるが、
父親を亡くしたコペル君にとっては上下でなく斜めの関係を結べる大事な存在だ。


停滞し、澱むことの多いいまの日本社会で、
80年前に出版された、こんな地味な物語が再読されることに希望を感じる。


君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

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