どうしても希望の力が必要だ(池江璃花子)

クリッピングから
毎日新聞2020年7月24日朝刊
今日からの1年「プラス1」


僕たちは忙しい現代に生きている。
物事を他人に要約してもらって、結論を急いで得ることに慣れすぎている。
でも、ときには立ち止まって、相手の言葉全部に耳を傾けてみたい。
共感も批判も留保もそれからでもいい。


  池江璃花子が読み上げたメッセージ全文は以下の通り。
  池江メッセージ全文


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池江璃花子オフィシャルサイトより転載)


  池江璃花子です。
  今日(23日)は、一人のアスリートとして、
  そして一人の人間として少しお話させてください。


  本当なら、明日(24日)の今ごろ、
  この国立競技場ではTOKYO2020の開会式が
  華やかに行われているはずでした。
  私もこの大会に出るのが夢でした。


  オリンピックやパラリンピックはアスリートにとって特別なものです。
  その大きな目標が目の前から突然消えてしまったことは、
  アスリートたちにとって、言葉にできないほどの喪失感だったと思います。
  私も白血病という大きな病気をしたから、よく分かります。
  思っていた未来が一夜にして、別世界のように変わる。
  それは、とてもきつい経験でした。


  そんな中でも、救いになったのはお医者さん、看護師さんなど、
  たくさんの医療従事者の方に支えていただいたことです。
  身近で見ていて、いかに大変なお仕事をされているのか実感しました。
  しかも今は、コロナという新たな敵とも戦っている。
  本当に感謝しかありません。
  ありがとうございます。


  2020年という特別な年を経験したことで、
  スポーツが決してアスリートだけでできるものではないということを学びました。
  さまざまな人の支えの上にスポーツは存在する。
  本当にそう思います。


  今から1年後。
  オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、
  どんなにすてきだろうと思います。
  今は、一喜一憂することも多い毎日ですが、一日でも早く、
  平和な日常が戻ってきてほしいと心から願っています。
  

  スポーツは、人に勇気や絆をくれるものだと思います。
  私も闘病中、仲間のアスリートの頑張りにたくさんの力をもらいました。
  今だって、そうです。
  練習でみんなに追いつけない。
  悔しい。
  そういう思いも含めて、前に進む力になっています。


  TOKYO2020。
  今日、ここから始まる1年を単なる1年の延期ではなく
  「プラス1」と考える。
  それはとても、未来志向で前向きな考え方だと思いました。


  もちろん、世の中がこんな大変な時期に、
  スポーツの話をすること自体、
  否定的な声があることもよく分かります。
  ただ、一方で思うのは、逆境からはい上がっていく時には、
  どうしても希望の力が必要だということです。


  希望が遠くに輝いているからこそ、
  どんなにつらくても前を向いて頑張れる。
  私の場合、もう一度プールに戻りたい。
  その一心でつらい治療を乗り越えることができました。


  世界中のアスリートと、
  アスリートから勇気をもらっているすべての人のために。
  1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いていてほしいと思います。


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東京五輪まで1年・・・池江選手「希望の炎輝いていて」(20/07/23)
(国立競技場からの池江メッセージ。スピーチ全文画像は発見できず)


www.youtube.com
(3分バージョン)


追記:2020年7月26日
池江メッセージ全文を読ませてもらった上で、
僕の考え、提案はこうだ。


  ●全文メッセージを動画で他の画像を挿入せず発信する。
  メッセージをもっとも率直に深く伝えるには池江のひとり語りが力強い。
  3分編集バージョン(添付)と並行して発信してはどうか。


  ●日本語の発信、英語字幕の発信(3分動画)だけではなく、
  複数言語の字幕を付けて発信してはどうか。
  その結果、「世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、
  否定的な声」は国内中心に発信するより強くなるかもしれない。
  それはそれで、世界の人々のオリンピック/パラリンピック開催と
  コロナ禍の間で揺れる気持ちの、現時点での揺れ幅を確かめるデータとして使えばよい。
 

参考までにNHK World でニュース発信に使用している言語は
以下20言語。


     Arabic, Bengali, Burmese, Chinese (simplified), Chinese (traditional),
     English, French, Hindi, Indonesian, Japanese, Korean, Persian,
     Portuguese, Russian, Spanish, Swahili, Thai, Turkish, Urdu, Vietnamese


外務省ホームページは日本語、英語の2言語使用。
各国・地域の大使館、領事館からは日本語、英語以外に
以下41言語で情報発信している。


      Chinese, Korean, Arabic, Armenian, Azərbaycan dili, Bosnina,
      Bulgarian, Czech, Croatian, German, Spanish, Estonian, French, Georgian,
      Greek, Hebrew, Hungarian, Indonesian, Italian, Lao language, Latvian, Lithuanian,
      Malaysian, Mongolian, Myanmar, Norwegian, Persian, Polish, Portuguese, Russian,
      Romanian, Slovak, Slovene, Serbian, Finnish, Swedish, Tetum, Thai, Vietnamese,
      Turkish, Ukrainian

   
ちなみに朝鮮民主主義人民共和国ニュースサイト Naenara(ネナラ)
以下9言語で発信している。

   
      朝鮮語、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、
      中国語、アラビア語


日本人に対して、日本人の情感に訴えるだけでは(僕にはそう見えた)、
今回の試みの本来の目的——2021年の東京オリンピックパラリンピック開催を
コロナ禍の推移を見守りながら、現時点で完全には諦めないこと——は
充分達成できないように思えた。


日本的情感のアプローチをあえて使いながら
日本以外の世界に発信できるメッセージにすること。
それこそがいま挑む価値のある課題ではないだろうか。


追記:2020年7月30日
TOKYO2020オフィシャルサイト
以下の11分39秒の動画を見つけました。


  2020年7月23日開催
 「一年後へ。一歩歩む〜+1(プラスワン)メッセージ〜TOKYO2020」
  アーカイブ映像


池江選手全メッセージの動画と、
その後に同ナレーションの3分バージョンが付いています。
今回のイベントの趣旨がよく理解できます。
YouTubeではこのアーカイブ映像は見つかりませんでした。
あくまで記録としてサイトに残しているのだろうか?