クリッピングから
朝日新聞2021年7月31日朝刊別刷be
「編集部から」
コロナ禍の記者会見等で
各国リーダーの資質、人柄が垣間見えた気がしていました。
吉田美智子記者が女性リーダーに焦点を合わせ、まとめた記事です。
be reportで世界の女性リーダーを取り上げました。
私は2014年から3年間、ブリュッセル支局長を務めましたが、
このとき接したのがドイツのメルケル首相でした。
当時、欧州ではウクライナ危機やテロ、
難民や英国の欧州連合(EU)離脱といった問題が相次ぎ、
EU首脳会議が毎週のように開かれた時もありました。
会議後には独仏首脳の会見があり、
私もほぼ毎回メルケル氏の会見に出ました。
メルケル氏は手元のメモに時折、目を落とす程度で、
記者を見ながら淡々と説明します。
再質問も可能で、的を射ない答えだと
「ちょっとわかりにくいのですが」と切り返されます。
それでも居丈高になったり、
他国や報道陣を揶揄(やゆ)したりするのを見たことがありません。
それが主要国のリーダーの品位なのだと感じさせられました。
旧東独で旧西独出身の牧師の子として育ったメルケル氏は、
権力者が多様な意見に謙虚に耳を傾け、
政策に反映する大切さを分かっていたのでしょう。
中東からの難民受け入れには世論の反発もありましたが、
自国民でなくとも人命や人権が優先されると説明しました。
国民はそんなメルケル氏を16年間も支えました。
さて、私たちはどんなリーダーを求めるのか。
その答えは、私たち自身の中にあるのだと思います。
(吉田美智子)