池澤夏樹・編/寄藤文平・絵『わたしのなつかしい一冊』(毎日新聞出版、2021)

土曜日は「今週の本棚」を読みたくて毎日新聞朝刊を買う。
本書はその書評欄からスピンオフした一冊。
池澤夏樹・編/寄藤文平・絵
『わたしのなつかしい一冊』(毎日新聞出版、2021)を読む。



池澤の「まえがき」から引用する。


  (略)
  この本は毎日新聞、土曜日ごとの
  「今週の本棚」という書評欄の一角にある
  「なつかしい一冊」という回り持ちのコラムを集めたものだ。
  そこに寄藤文平さんの秀逸な挿絵が押し入る。
  (略)


  しかし、本当によい読書の記憶は「昔」の中にある。
  若い時に読んだものほど心の深層に定位していて、
  折に触れて浮上してくる。
  そういう体験を語ってもらいたい、というのが
  このコラムを提案した時のぼくの思いだった
  (ぼくは丸谷才一さんから
  「今週の本棚」の顧問のような役を受け継いだ)。


  若い時はまだ本を読む力が足りない。
  むずかしいと思って途中で放棄することも少なくない。
  ところが、何年もたって、何十年もたって、
  そういう本が帰ってくる。
  今ならば、世間に揉まれた今のあなたならば、読めますよ
  という顔で目の前に現れる。

                    (p.002-003)


各界を代表する50人の執筆者が
とっておきの「なつかしい一冊」を紹介し、
原稿の内容に寄り添うイラストレーションを寄藤が描く。
どこから読んでもいいんだ、とランダムに読んでいたら、
いつの間にか、全編読み終えてしまった。


本を読むのが苦手と思っている若者には
50人のうちで自分が一番気になる人の一編を読んでもらいたい。
自分でも思いも寄らなかった世界に続くドアが
そこから突然開くかもしれないのだ。


(「今週の本棚」20年分を集大成した三部作。丸谷・池澤が道案内を務めてくれる)