春のキャベツをさはさは刻む(安田渓子)

クリッピングから
讀賣新聞2022年4月18日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の好きな3首、抜き書きします。


  スニーカーのようなデザインタンカーが
  青い沖合進んで行くよ

          横須賀市 髙野桜子


    【評】爽やかなストライプだろうか。
       船を履く巨人を幻視させるダイナミックな一首。


  何事もなく過ぎてゆく安らぎに
  春のキャベツをさはさは刻む

          青森市 安田渓子


水気を多く含んだ春キャベツを刻む音、
「さはさは」を発見したことに僕は驚きました。


  卒業生一同として起立する
  咲く寸前の花火みたいに

          名古屋市 木村槿


青春の、ひとつの時期が終わりを迎える一瞬を
ハイスピードで撮影し表現したような一首でした。



言葉を追いかけ、
その光景や心理を自分勝手に想像していると
心が現実から距離を取るようで安らぎます。