終わったと告げない冷やし中華のように(猫田あめ子)

クリッピングから
讀賣新聞2022年12月26日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  カーテンの波打ち際に陽の射して
  裸足のままの今日は休日

         横浜市 山田知明


    【評】波打ち際の比喩を受けることで、
       裸足が素敵(すてき)に見えてくる。
       休日だからただ靴下を履いていないだけだとしても、
       海辺を歩く雰囲気になる。
       想像力が休日を豊かにしてくれた。


  密やかに退職済ます 
  終わったと告げない冷やし中華のように

            東京都 猫田あめ子


    【評】「冷やし中華はじめました」は見かけるが
       「終わりました」は確かにない。
       その気づきを、自分の退職に重ねたところが面白い。
       季節が移ろうように、自分は退くのだ。


  シクラメン、ツリー、白猫、冬の陽に
  愛されるもの窓辺に並ぶ

          平塚市 小林真希子


    【評】十二月の窓辺を、名詞を並べることで端的に描写した。
       「愛される」としたところに肯定的な視線が感じられて、
       心が温かくなる。