ガラケーに残りし声の消しがたく(飯吉セキ子)

クリッピングから
讀賣新聞2023年3月27日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  お歳暮をやさしくあけて包装紙
  なでてたたんだ母のゐた冬

        仙台市 岩間啓二


    【評】動詞で描いた母親像。
       特に「なでて」に、単にものを大事にする以上の
       慈しみが感じられて、胸を打たれる。


  見返したドラマに記憶違ひあり
  現実は見返すことが出来ない

         甲府市 村田一広


    【評】かつて見たドラマの展開やセリフ、
       間違って覚えていることがままある。
       ただし、そうと気づけるのは見返せるからだ。
       たぶん人生にも似たような記憶違いがある。
       かみしめるような結句に、人生の一回性を思う。


  ガラケーに残りし声の消しがたく
  充電しては命をのばす

        大和市 飯吉セキ子