福神漬けを多めにあげる(老川瑠莞)

クリッピングから
讀賣新聞2023年4月18日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  まずこれを愛と仮定してみましょう
  福神漬けを多めにあげる

         山梨県 老川瑠莞


    【評】目に見えない愛を、
       真っ赤な副菜である漬物にたとえるアイデア
       意表を突いた結句の愛の表現に唸(うな)った。


  手話交え開花を告げる
  気象庁職員の手が春へと触れる

         越谷市 吉村花緒


    【評】手話を知らずとも、これが花かな?
       今の動きは「咲く」かな? と想像できる。
       身振り手振りで春の訪れを伝える様子を捉えた結句が美しい。


  本州と北海道の春くらい
  イメージちがうマスク外すと

      富士見市 松本尚樹


    【評】マスクを外した時の開放感を詠んだものだろう。
       北海道では、春の訪れは遅いが、
       そのぶん一気に迫って来る。
       スケールの大きい季節の比喩が、
       この春の気分にぴったりだ。


(奥只見から到来したフキノトウ。苦みがまったくない)