矢部太郎/長谷川嘉哉(原案)『マンガ ぼけ日和(びより)』(かんき出版、2023)

認知症専門医の長谷川嘉哉さんの原案を
矢部太郎さんがマンガ化。
『マンガ ぼけ日和(びより)』(かんき出版、2023)を読む。



ある日、市民ホールでの講演を終えた長谷川さんが
帰り道、60代くらいの小柄な女性に呼び止められる。


  「あんな大事なこと! 
   なんでだあれも…
   教えてくれんのですか?」


と問われる。


その女性は介護していたお義母さんに


  「アンタ 私のお金盗ったやらあ!
   この泥棒が!」


と何度も激しくなじられた。
長谷川さんは答える。


  「モノ盗られ妄想は…
   患者のお世話を一番している方、
   つまり…
   もっとも頼りにしている方に対して出るんです」


  「亡くなるまで 
   お義母さんの前では 
   心を閉じとったんですよ
   知っとれば… 
   もうちょっと 
   優しくできたかもしれんね」


その言葉が長谷川さんの頭から離れなくなった。
この本の読者にこう語りかける。


  知識があれば
  最期の時に笑顔で見送れる
  そのために認知症のあれこれを
  お話させてください


  これは 私が出会った 
  たくさんの患者さんと
  ご家族のお話です


  そして
  あなたと 
  あなたの大切なご家族のお話です。

      (pp.004〜007から引用)



矢部さんの絵が
重たい話題を読む読者の心を
少しだけ軽くしてくれる。