夢はあなたと2人で演奏したい

クリッピングから
毎日新聞2023年8月7日朝刊
読者投稿欄「女の気持ち」
これも終活?


  体操教室で知り合った3歳年上の友人が、
  10代のころ5年ほど習ったことのある箏(そう)を
  再び習い始めたとのこと。
  しばらくして三味線もやりたくなり、
  こちらは初心者なのに両方のおけいこをしているという。
  1人暮らしで一日中家にいたらストレスがたまるから、
  何か外に出かけて集中できることを見つけたい、
  というのが理由だった。


  私も娘時代から20年ほど習っていたのだが、
  それ以降は箏や三味線に触れたことは一度もなく、
  処分したいと思っていた。
  「私のを使ってほしい」と話したところ、
  「それならあなたも一緒にやろうよ。
   毎日おけいこして少しずつ弾けるようになってくると、
   楽しくて楽しくて」と笑顔。
  久しぶりにやってみようかな、と引き込まれた。


  誘われたのは公民館でやっている、
  シルバー10人余りの団体げいこだった。
  皆について弾いていればいいか、と思っていると友人が言った。
  「同じやるならうまく弾きたい。
   いつどうなるかわからない年齢だから、できるうちに。
   夢はあなたと2人で演奏したい。
   だから時間をみて、ほかにもおけいこしよう」


  一緒におけいこしているうちに、
  友人はどんどん上手になり、元気になり、若くなっている。
  年下の私が後押しされている状態だ。
  でも近ごろは、こういう終活もありか?
  と思うようになり、今日もピンシャン弾いている。

            岐阜市 八代洋子 主婦・80歳