クリッピングから
毎日新聞2024年2月3日朝刊
「今週の本棚」養老孟司 評(解剖学者)
『老いをみつめる脳科学』森望著
(メディカル・サイエンス・インターナショナル・2970円)
著者はアメリカでの研究歴が長い。
コラムでもその時の幸せそうな感じが伝わってくる。
現在の老化研究はアメリカがいわば中心であり、
世界一お金持ちの国が研究に投入する資源には
日本から見ればため息が出るほどの余裕がある。
それをいわば無視して、
最終的な研究成果を競って頑張ってみても、
この前の戦争みたいになりかねない。
科学研究は知りたいとか、
自然現象を解明したいとかいう動機で始まるが、
現代ではそうした素朴な時期は過去のものとなり、
全体にシステム化され、
研究者はその中で一定の方向に動かされざるを得ない。
科学に限らずどのような分野の仕事であれ、
現代社会ではその意味での自由な仕事などほとんどないであろう。
学問の自由とはなにか、本書とは直接の関係はないが、
なぜか読後に考え込んでしまうことになった。