肌と胃袋で街を記憶する


時間をひねり出しては銭湯お遍路を続けている。
湯につかった後は最寄りの駅までフラフラ歩くのだが、
そうしているうちになんだか東京の街街と仲良くなれる気がしてくる。
なんでも仲良くなるには
肉体を使う手間ひまを惜しんではいけないということですな。



新宿33番、ドラマや映画の撮影にもよく使われる神楽坂の熱海湯。
名前通り本当に熱くてとても長くは入っていられない。
この界隈はそぞろ歩きにはもってこいの場所である。
湯上がりに五十番本店を覗いて、定番の肉まんをふたつ買う。
ひとつ360円だが、普通の肉まんのたっぷり二倍はある大きさだ。



この店では中華まんだけでも、
肉まん、あんまん、チーズ、野菜、椎茸肉まん、カレー、辛みそ、
海老、五目、貝柱、ぴり辛、純正肉まん、黒豚、キムチと14種類。
店でくれる「まんじゅうのしおり」を見ると、
それぞれの見分け方が書いてある。
肉まんなら絞ぼり頭、カレー肉まんなら松の実、
黒豚肉まんなら黒ゴマといったあんばいだ。


14種類の中華まんの見分け方を
懸命に考えているご主人の姿を想像すると
なんだか楽しくなってくる。



そうして買った肉まんを家で食べていると、歩いた街の記憶が蘇る。
その記憶は脳のサーバのどこかに貯蔵されてゆく。
僕の場合たぶん、肌と胃袋を通じて街を記憶しているのだ。