根が凝り性なのだと思う。
日が暮れて京橋に向かう。
角(かく)打ち四軒目、「枡久(ますきゅう)」を覗く。
角打ちとは酒屋の奥にある立ち飲みコーナーを指す。
「枡久」は大正10年創業の老舗酒屋である。
いつから角打ちを始めたのかは知らない。
おおお、店の奥は中高年男性会社員のパラダイスですな。
大型冷蔵庫から好きな飲み物を出し、
おつまみコーナーからおつまみを選び、
カウンターの女将に持って行くとその場で勘定してくれる。
「サンロク」「ヨンパチ」「イチゼロ」といった符丁である。
魚肉ソーセージを持って行けば
食べやすいように包丁で半分にしてくれる。
袋詰めのピリ辛げそ焼は小皿に移してくれる。
箱入りチーズを持って行くと
「全部じゃ多いだろうからひとつでいいでしょ」
と女将が適度にかまってくれる。
20時閉店。10分前に滑り込んだ二人組は、
20時ちょうどに「あと一本だけ」と女将にすがっていた。
その気持ちはよく分かる。
僕は一見なので長っ尻は野暮。
「枡久」を後にして、夜の京橋に消えることにした。
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