池井戸潤『下町ロケット』(2010)

池井戸潤下町ロケット』を読む。
町工場・佃製作所の開発したバルブが
業界最大手・帝国重工の技術陣を出し抜き特許獲得。
そのバルブなしには国産ロケット打ち上げの成功確率を
上げることはできない。
技術者同士のプライドが激突し、
組織の論理が人を動かし惑わす。


空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)


以前の傑作『空飛ぶタイヤ』と比較して、
大企業=悪、中小企業=善と割り切るのでなく、
大小いずれの組織でも
夢と現実のギャップに揺さぶられる人たちを描いている。
僕の好みで言えば『空飛ぶタイヤ』に軍配を上げるが、
作家の成長、成熟というのは
こうした変化を生み出すのだろうと納得もする。
登場人物や場面設定こそ違えど『下町ロケット』は
空飛ぶタイヤ』の続篇に位置づけてもいい作品であると僕は思う。


下町ロケット

下町ロケット


過去に『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』で二度候補になった直木賞
池井戸はこの作品で獲得(第145回)。
受賞のタイミングが熟していたことを
審査員はきわめて順当に評価した。
今回逃せばはたしてこの先の受賞があったか、どうか。
受賞を契機に池井戸が作品を書き続けてくれることを
一読者として望む。


おめでとうございました。


(文中敬称略)