このところ中国史を中心に
ノンフィクションを読む機会が多かった。
その反作用で今度は小説が読みたくなり、
伊坂幸太郎『モダンタイムス』(上・下)を読了。
伊坂の作品は久しぶりに手にした。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/14
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上巻を軽快に読み進むと、
下巻の中盤あたりからこの作品は俄然面白くなる。
特定の悪人にではなく
システムに縛られ人々の思考が停止する。
善悪の判断があいまいになり
自我の拡大にのみ関心を持つか、はたまた虚無に襲われる。
現代社会に生きる我々の課題を
伊坂流のストーリーテリングで描いた作品に仕上がった。
どんなにシステムに支配されている社会でも
自分の周りを少しだけ変えることができる。
この作家の作品は読後感がよくて救われる。
主人公の妻・佳代子のキャラクター設定が秀逸。
文庫版では初出・単行本とは骨組みは変えずに改稿。
著者曰く、
『モダンタイムス』は
三年前(二〇〇八年)に発表した時から、
「自分にしか書けない自信作だ」
という思いがありました(絵に描いた自画自賛です)。
「どうすることもできない」仕組みを、
娯楽小説の形で表現できた、という思いが
あるからかもしれません。
それが、今回この改稿を行ったことで
さらにベストの形になったと感じています。
(文庫版あとがき p.455-456より引用)
思わず単行本と
読み比べたくなっちゃいますね。
(文中敬称略)