芋づるを辿って<狐>にたどり着く


芋づる式である。
坪内祐三『文庫本福袋』にこうある。


   「日刊ゲンダイ」の水曜日の名物コラムに<狐>の書評がある。
    わずか九百字ほどのこのコラムが読みたくて
    毎週水曜日の「日刊ゲンダイ」を買っていた本好きの友人がいる。


                         (p.422より引用)


“狐”が選んだ入門書 (ちくま文庫)

“狐”が選んだ入門書 (ちくま文庫)


会社の入っているビルの一階の本屋の棚を探すと、
『<狐>が選んだ入門書』が見つかった。
坪内の本を読んでいなければ、まず手を出さないタイトルだ。
芋づる式にたどり着いた。
読後感は静謐である。
言葉、古典文芸、歴史、思想史、美術。
5つのカテゴリーから<狐>がこれはと思う入門書を
5冊ずつ計25冊取り上げて解説していく。



<狐>は「入門書」をこう定義する。


    (前略)
     その本そのものに、
     すでに一つの文章世界が自律的に開かれている。
     思いがけない発見にみち、読書のよろこびにみちている。
     私が究極の読みものというとき、
     それはそのような本を指しています。


                       (p.12より引用)



<狐>の外連味のない文章に誘われ、
5つの道からそれぞれの世界の高みにいつしか登っていく
読書感覚のうれしさよ。
<狐>こと山村修は2006年7月に本書を上梓し、
翌月、肺がんのため帰らぬ人となった。
山村は大学図書館に司書として勤務するかたわら、
匿名書評家<狐>として22年半「日刊ゲンダイ」に寄稿し続けた。


文庫本福袋 (文春文庫)

文庫本福袋 (文春文庫)