審査二日目。
ルールが整備されていないことが理由で混乱がひどくなり、
一度だけAmirが本気で切れた瞬間があった。
たとえ審査委員長でもその場で突然のルール変更はできず、
どうにも裁ききれない事柄だったからだ。
一方、非難を受けた事務局長Metaも
言葉は穏やかだが感情的になる。
The CUPをJureとともにここまで育て上げてきた
スロベニア生まれの女性である。
誰にも愚痴を言えず、現場の困難を背負ってきた意地がある。
場に緊張が走った。
こんなときゴッドファーザーMichaelの発する言葉で
張りつめた空気がほんの少し弛む。
困難を恐れず信念を持ち続けることと、
その場その場で融通無碍であることを
矛盾なく体現している人なのだ。
Michaelの言葉を受け、
すかさずAmirは短い時間で感情を制御し、
審査を再びレールに戻した。
敵味方が入り乱れるサッカーフィールドで、
一瞬のチャンスにゴールを決めてしまったフォワードのようだった。
危機を乗り切ったこの「事件」があって、
Amirは審査委員長としてかえって全員の信頼を得た。
頭が切れるだけではリーダーは務まらないのだ。
簡単に真似のできる行動ではないけれども、
この時間に起きたことを自分の心にきちんと刻んでおこうと思った。
⚫⚫⚫
その後分かったことだが、
Amirが切れた間の一部始終をiPhoneで動画撮影した人がいた。
もちろんその名は Michael Conradである。
(右の白髪の男性が我らが Michael Conrad)
そんなことができる人は僕の知る限り
Michaelしか存在しない。
もちろんAmirを茶化すのが目的ではない。
混乱をも人間性の表現の一部であると慈しんでいるのに違いない。
またしてもMichaelの融通無碍に脱帽し抱腹絶倒したのであった。
(2013.3.9 トルコ航空機内で追記)
(いやはや怖ろしい時代になったもので
高度10,000mで安定飛行になると機内でWiFiが使えてしまう。
iPhoneでメールを送ったらみんなびっくりしてました)