挑発が喝采を呼ぶカンヌセミナー


広告作品展示からセミナーへ
この数年でカンヌの舵はすっかり切り替わった。
クリエーティブの人間から不満は出るものの、
ビジネスとしては大成功を収めている。
入場者数、エントリー数、セミナー開催数を見れば一目瞭然だ。



意外に思うかもしれないが
カンヌでセミナーを開催するのにお金はかからない。
最近は事前にテーマ審査(複数案提出の義務あり)があるが、
通過すれば費用は要らない。



その代わり、コンテンツにかける費用は自前で
セミナー間の競争が激しくなる一方。
入場者数は常にチェックされる。
だから、観客を喜ばせるゲスト招聘競争がエスカレートするのだ。


朝イチのmcgarrybowenに始まり、
Facebookまで5つのセミナーに出席する。
Facebookセミナー・モデレーター、
FortuneのPattie Sellersの切り回しが秀逸。
「カンヌでは素晴らしい仕事が見られるが、
問題はそれらの仕事がカンヌでしか見られないことだ」
冒頭からスピーカー、観客を挑発する。
David Droga (Droga 5) が感情を抑制しながらも反論を試みる。



一流ジャーナリストは挑発がうまい。
相手を怒らせることで本音を引き出し、
発言を瞬時に論理的に再構築して観客に提示する。
鮮やかな能力、スキルだ。



Facebookセミナーのテーマは Creativity at Scale。
計測可能であるScaleでなく、
大規模での実現による影響力のScale に焦点が当てられた。
小スケールでカンヌの賞をさらっていく仕事の社会的意義について
あらためて考える機会になった。



他のセミナーでは20世紀ファッションデザイナーのアイコン、
パンクファッション産みの親、Vivienne Westwood の発言が印象的。
いまはパンクと180°異なる環境保全活動などで活躍し、
「政府の言葉を信用することなく、古典を読み、抵抗活動を始めよ」
と観客をアジテーション喝采を浴びた。
Vivienneの生き方そのものがパンクだ。
セッションを予定調和で小さくまとめようとした
SapientNitroファシリテーターの面目丸つぶれだった。