エズラ・F・ヴォーゲル『現代中国の父 訒小平(下)』を読む。
毛沢東リーダーシップの元、三度更迭され、三度復職。
共産党、マルクス・毛沢東思想を否定せず、
社会主義に競争原理を導入していく手腕。
この時期の中国に、訒小平というリーダーが必要だったことが理解できる。
- 作者: エズラ・F・ヴォーゲル,益尾知佐子,杉本孝
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/09/03
- メディア: 単行本
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華国鋒、胡耀邦、趙紫陽らと協業を進める一方、
最後には彼らを排斥する。
権力のトップに立つ者ならではの宿命だったのか。
そして1989年6月4日の天安門事件は歴史の必然だったのか、
それとも訒小平の生涯最大の判断ミスなのか。
ヴォーゲルは膨大な史料、インタビュー、中国語能力を活かして、
中国現代史の核心に迫る。
歴史の真実にガラス板一枚隔て、
あえて結論めいたことを書かないのは
学者の良心だろうか、為政者でない限界か。
言っても詮無いことだが一抹の物足りなさが残る。
僕が一番印象に残った訒小平の言葉は、
1989年9月4日、江沢民、李鵬、喬石、姚依林、宋平、
李瑞環、楊尚昆、万里ら後継者に与えた指示だ。
「最初に冷静に観察すること(冷静観察)。
第二に足場を固めること(穏住陣脚)。
第三に落ち着いて行動すること(沈着応付)。
急いではだめだ。よいことはない。
冷静に、冷静に、さらに冷静になって、
黙々と実務に打ち込み、事をやり抜くのだ。
われわれ自分たちの仕事を」。
(本書下巻p.358より引用)
邦訳上下二冊1,177頁。
読み応えのある歴史書であることは間違いない。
益尾知佐子・杉本孝訳。
(文中敬称略)