柚木麻子『終点のあの子』(文藝春秋、2010)


ナイルパーチの女子会』がとても優れた作品だったので、
近所のK図書館で蔵書を探し、借りてきた。
柚木麻子『終点のあの子』(文藝春秋、2010)を読む。


終点のあの子

終点のあの子


世田谷のプロテスタント系私立女子高に通っていた4人が、
それぞれ絡みあう4編の短編小説集。
立花希代子「フォーゲットミー、ノットブルー」、
森奈津子「甘夏」、
菊池恭子「ふたりでいるのに無言で読書」、
奥沢朱里(あかり)「オイスターベイビー」。
(名前はそれぞれの作品の主人公)


文章を追い、物語に入っていくうちに、
記憶の底に沈んでいた自分の高校生活の断片が、
映像、会話、感情とともに浮かんでくる瞬間が幾度かあった。
不思議だな。


高校生活、その後の大学生活での人間関係には、
大人になってからの人間関係のすべてがあったと思う。
友情。裏切り。孤立。見栄。冒険。差別。いじめ。
落胆。恥辱。やすらぎ。悪意。怒り。許し合い。
それでも、大人の人間関係で喪失してしまった、
なにか貴重なものもそこにはあったように記憶する。


4つの虚構の物語と、自分が過ごした過去の物語が、
ときに絡み合い、触発し合い、感情が揺れるのが
小説を読み醍醐味なのだと思う。
柚木麻子作品が現代の高校生たちに支持されるのは当然だと思うし、
かつて高校生だった自分にとって彼らの支持は、
なんだかうれしいことでもあるな。


終点のあの子 (文春文庫)

終点のあの子 (文春文庫)

(文庫版も装画・菅野裕美、装丁・大久保明子)


柚木は「フォーゲットミー、ノットブルー」で
第88回オール讀物新人賞受賞
本作が初めて発表した単行本。
「ふたりでいるのに無言で読書」「オイスターベビー」は書き下ろし。
4編揃って厚みのある連作となった。


ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

ナイルパーチの女子会 (文春文庫)


第88回オール讀物新人賞審査員は次の5名。
石田衣良重松清篠田節子杉本章子山本一力
2月に発売された『ナイルパーチの女子会』文庫版では
巻末に重松清が心のこもった解説を執筆している。


BUTTER

BUTTER

(柚木新作。区立図書館の予約、現在732位。忘れた頃に順番が回ってくるな)


(文中敬称略)