複眼を身に付ける作品閲覧法


若手に勧めたい作品閲覧法がある。
ひとつのカテゴリー、PressならPress、
OutdoorならOutdoorを全作品見ていく。
そして審査員になったつもりで採点していく。
10点法でもいいし、Gold、Silver、Bronze、Finalistでもいい。
そのとき審査員の得点は無視することだ。
自分が気になった作品をメモしておいて、
次にその作品だけを丁寧に見直す。



なぜこの作品に自分は惹かれるのか、理由を考える。
それを友人にも説明できるように言葉にしてみる。
英語で説明したらどうなるか考えればさらによい。
自分の英語力でそれが表現できないなら、
帰国してそうした語彙、文、発音を教えてくれる
ネイティブの個人レッスンにお金を払う。
自分の考えていること、伝えたいことが
少しずつ英語で言えるようになる。



   (写真上2点はAdFestサイトより引用)


大切なのは、理由が分からないのに自分を引きつける作品を
自分の目と足で見つけることだ。
一点ずつ丁寧に、根気よく。
他人の意見、批評にじゃまされずに。
その作品に惹かれる感覚は
自分だけのオリジナリティの地下水脈に必ず繋がっている。



   (「なんでもアウトドアならうまくいく」
     アウトドア以外のメディアを人々が戸外で楽しむ
     アウトドア広告祭のための広告。
     ムンバイ・タップルート電通制作)


自分の採点表が完成したら、
今度は審査員の採点表と比較してみるとよい。
どこが共通で、どこか違っていたか。
審査員はなぜその作品に賞を与えたのか、
セミナーに出れば理由を聞くことができる。
その理由を、自分が選んだ(選ばなかった)理由と比較するのだ。




   (「最後にあなたの顔にシワを刻むクリーム」
     乳房の異常を早期発見するクリームのおかげで
     この女性はシワを刻む年齢まで長生きできた。
     オークランド・コレンゾBBDO制作)


そのトレーニングを何千回、何万回と繰り返すことで
自分だけの目と、いい作品を発見する「共通した目」を持つことになる。
それはクリエティビティを養うための複眼なのだ。
尊敬に値する審査員なら複眼を持っていて、
その目が曇らぬように一日も休むことなく磨いているはずだ。
すべて偉大なものは、地道なものが支えている。