現在の自衛隊を憲法に書いてみる(阪田雅裕)

1月から制度が始まって3回目の在宅勤務。
仕事の区切りを見計らって
近所のK図書館に新聞を読みに行く。
少し身体を動かすのも気分がいい。


スクラップブックから。
朝日新聞2018年2月7日朝刊。
オピニオン&フォーラム 憲法を考える
内閣法制局長官、弁護士
阪田雅裕(さかた まさひろ)さん



   憲法自衛隊を書いても、
   今の自衛隊に変更はないと安倍晋三首相は言う。
   そんなはずはないと野党は言う。


   自衛隊は変わるのか、変わらないのか。
   私案を作って、この問いを考える材料を
   示してくれた人がいる。
   憲法解釈のプロ、内閣法制局長官を務めた
   阪田雅裕さんだ。
   その思いを聞いた。
   ●●●


   (略)
   安全保障法制が成立し、
   現在の自衛隊をそのまま憲法に書くことは
   とても難しくなりました。
   (略)


   国会では抽象的な議論ばかりで、
   条文にしたらどうなるのか、という具体的議論が
   足りないように思います。
   (略)


   今の自衛隊を書く、と言いながら、
   今の自衛隊について具体的に説明していません。
   災害救助や、他国から攻められた時に
   実力で追い返すという範囲ならば、
   多くの国民は賛成するでしょう。


   しかし、安保法制によって
   海外での武力行使もできるようになりました。
   それを憲法に書くということはどういうことなのか、
   総理は本当に理解されているのかどうか。
   (略)


   安保法制の内容を盛り込んだ私の案のような改正案が
   国民投票で否決されれば、
   安保法制は白紙に戻らざるを得ないのです。
   日本の平和主義のあり方を国民に問う
   貴重な機会になると思います。
     —なるほど、安保法制を
      実質的に国民投票にかけるということですね。

   (略)
   私の案のもう一つのメリットは、
   9条に歯止めがかかるということです。
     —どういう意味ですか。


   今の9条では、
   いずれ解釈が広がりかねないという意味で、
   大きなリスクをはらんでいます。
   今の9条は、侵略戦争を禁じているに過ぎない
   という人たちがいます。
   (略)


   それを考えると、
   限定的な集団的自衛権であっても
   9条にたがをはめることができます。
   (略)


     —9条の無理な解釈変更を招いたのは、
      法制局の敗北ですか。


   そうは思いません。
   公明党の力もありますが、この線で止めたという意味が大きい。
   (略)


   他に例のない、この日本国憲法のもとで、
   どんな人的貢献ができるかと、
   ぎりぎりの知恵を出してきたのがこれまでの歴史です。
   その『変な』状態をやめたいというのなら、
   9条2項を削除し、平和主義をやめるしかありません。
   (略)


   今の自衛隊への拒否反応は少ないと思いますが、
   その自衛隊をそのまま書くことはそれほど簡単ではありません。
   政治家はごまかしてはいけないし、
   国民もごまかされてはいけない。
   その上で改憲がいいかどうか、
   よく考えていただきたいと思います。
                   (聞き手・三輪さち子)



憲法改正の議論に不足する点を
内閣法制局長官・阪田さんの私案と意見を提供した
朝日の見識は評価できる。
安保法制を実質的に国民投票にかけるのも
理解しやすいし納得できる。
法の専門家であり、政治の現場でも仕事をしてきた
元トップの考えは大変参考になった。
イムリーで、読み応えのある記事だ。


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参考資料:


■9条改正 阪田私案(3項以降)


1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を
 誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、
 武力による威嚇又は武力の行使は、
 国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。


2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、
これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


3 前項の規定は、自衛のための必要最小限の実力組織の
 保持を妨げるものでない。


4 前項の実力組織は、国が武力による攻撃をうけたときに、
 これを排除するために必要な最小限度のものに限り、
 武力行使をすることができる。


5 前項の規定にかかわらず、第三項の実力組織は、
 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が
 発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険が
 ある場合には、その事態の速やかな終始を図るために
 必要最小限度の武力行使をすることができる。