柚木麻子『デートクレンジング』(祥伝社、2018)


柚木麻子の最新作を思いがけず早く
C区図書館で借りられることになった。
金曜日、ワークショップ懇親会を終えて、
22時まで開館しているH図書文化館に受け取りに寄った。
柚木麻子『デートクレンジング』(祥伝社、2018)を読む。


デートクレンジング

デートクレンジング


不思議なタイトルは
結成10年で解散したアイドルグループの名前。
前田春香。野波暮羽。加瀬真奈美。金井茉莉花。篠崎惟子。
5人のキャッチフレーズは、
「デートの呪いをぶっつぶせ」。
副会長が一時期夢中だった「ももクロ」を思い浮かべて
僕は読んでいた。


   佐知子は考え考え、言葉を絞り出す。
   「私たちはなんにも変わっていないのに、
   時間とか周囲の目とか環境とか身体の変化に
   引き裂かれているだけなんじゃないかな?
   それを乗り越えるには、それを乗り越えるには……」


   必要なのは、先ほど書店のあちこちで目に飛び込んできた
   女性向けエッセイのタイトルにあった「バランス感覚」でも
   「心をつかむ気配り」でも、
   「しなやかなセンス」でもない気がする。
   自分のような無趣味な人間が、
   この単語を口にするべきかどうか、最後まで迷った。


   「……オタクのパワーしかないんじゃないのかな」
                      (pp.140-141)


婚活に追われる実花、芝田。
妊活に追われ、妊娠したらしたで
保育園、再就職の心配に追いかけられる佐知子。
時間、周囲の目、環境・身体の変化の「呪い」をぶっつぶせ
と言い切れるほど若くないことをみんな自覚している。


登場人物たちがやや意外な出口を見つけ、物語が終わる。
後味がほどよいのが柚木麻子作品の真骨頂。
現実に立ち向かいながら、絶望でもなく気休めでもなく、
ほどよいところに着地する。



(新聞広告で見つけて、すぐ図書館サイトで予約入れました)


金曜日にちょっと無理して
H図書文化館に受け取りに行ってよかった。
取り置き期限が日曜までだったから
もう諦めようかなとも迷ったけれど、
読めてよかったと思える作品だった。


(時間どろぼうと言えば……この作品ですね)