暖かい「赤」の色(橋本美和子)


スクラップブックから
朝日新聞2019年1月21日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
暖かい「赤」の色
横浜市 橋本美和子 主婦 82歳


   (略)
   私は、複数の障害がある視覚障害児の施設で
   栄養士をしていました。
   梅干しづくりをしていた時、
   当時5歳の女の子だった、全盲のふうちゃんがやって来ました。
   「何しているの?」


   そこで、シソを持たせて一緒に千切りにしながら
   「これを塩でもんでから、酸っぱい梅干しの中に入れると、
   真っ赤に染まるのよ」と言いました。
   そのとき、
   「あっ、見えないのに『赤』なんて、
   悪いことを言ってしまった!」と思いました。


   ところがふうちゃんは、
   「赤いって、夕日が顔に当たった時の
   あのあったかいのが赤だって、
   保母さんが教えてくれた」と言いました。
   何てすてきな教え方でしょう。
   教えた方の人柄がしのばれると共に、
   ふうちゃんを抱きしめました。


   そんな思い出に浸っているうちに、
   我が家の庭に夕日が当たり始めました。
   夕日に顔を向けて、目をつむり、
   暖かい「赤」を感じました。
   ふうちゃんは元気だろうか、と思いました。


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橋本さんの投書を読んで
「ソニーテープ千一夜 寺山修司 色と音」を思い出しました。
白土謙二さん松本邦彦さんが寺山修司さんと制作した
90秒のラジオCMです。


ふうちゃん、どこかで元気に暮らしているといいですね。
橋本さん、素敵な「赤」の思い出をありがとう。